太陽系惑星儀
2009/11/15
●不思議な破片
1900年、ギリシャ・クレタ島北西のアンティキラ島沖合いで、偶然発見された沈没船のなかから、奇妙なブロンズ片が見つかった。
考古学者スピリドン・ステイスがその破片の中に歯車の輪郭を発見し、「アンティキティラの機械」として注目を集めるようになった。
それの技術水準の高さがわかるのは、20世紀後半になってからだった。
最新の研究では、以下の事が判明している。
- ブロンズ製
- 20個以上の歯車と多数の薄板から複雑に構成される
- 装置全体が木製の箱の内部に取りつけられていた
- 並んで固定された薄板には目盛が刻み込まれていた
- 箱の側面の通したシャフトが回転すると歯車が動き、指針がそれぞれ各目盛上を異なる速度で移動する
- 箱の表面には操作方法などコイネー(現代ギリシャ語の元になった言語)で書かれている
- 紀元前150-100年に作られたと推定される
- 月の運行の計算技術に天文学者ヒッパルコスの理論が用いられている
- おそらくヒッパルコスが設計した技術者であった
- 機械の概念は古代コリントスの植民地に起源をたどることができる
- アルキメデスとの関係も示唆している
- この機械自身はギリシャで作られたと考えられている
●脅威の技術
当時の通説では、このようなメカニズムが登場したのは1575年に製作された置時計の内部だったとされていた。
研究結果、この機械が”太陽系惑星儀”であり、以下の機能を持つ精密な”機械式アナログコンピュータ”であることが判明したのだ!
- クランクを回転させると機構が太陽、月やその他の天体の位置を計算する。
- ※地動説モデルを採用している
- 外側のリングは365日のエジプト式カレンダーを表示する
- 内側の暦ダイヤルを4年に1回1日分戻すことにより実際の1年(約365.2422日)との誤差を補正することができる
- ※最古のうるう年を含んだ暦であるユリウス暦の成立は、この機械が作られた100年後の紀元前46年(しかも紀元後1世紀前半までうるう年は誤って運用されていた)
- 前面の表示盤は少なくとも3つの針を持ち、1つは日付、残りは太陽と月の位置を示していた
- 月の表示針を動かして月軌道の真近点角が求められる
- 前面の表示盤には第二の機能として球体模型を使った月相表示機能がある
- 機械に刻まれた対照表を見ることで割り当てられたギリシャ文字から天体を知ることができた
- 暦を修正したり日食や月食の予定日を予測する
- 古代ギリシャのオリンピックの開催日を示す
しかし、当時これを完成させるだけの天体観測技術、ギア技術が存在した痕跡が全く無かった。
一般的にギリシャ文明は、精神面を尊んだ文明とされ、具体的な技術や科学は軽視されがちだったと言われている。
●使用目的
以下の推測が有力だが、決定的なものはない。
- 星の配置の計算。占星術師の仕事をかなり楽にしたと思われる。
- 天文学上の出来事に関連した宗教的祭りの日付の算出。
- 暦の修正。太陽と月の双方の動きに基づいた暦。
携帯を意識して設計されていること、詳細なマニュアルが付属していたことを考えると、「専門知識を持たない人間が持ち運んで」使用していたことまでは分かっている。
この機械を製造した技術は、遥か太古の遺産なのか。
人類は、高度な文明を築きながらも何度か滅びかけて現在に至っているのだろうか。
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