錆びない鉄柱
2009/11/15
●錆びない鉄塔
インド首都ニューデリー、メハラウリにある寺院の境内にそれはある。
通称「アショカ・ビラー」。
- 直径約44センチ
- 高さ6.9メートル
- 地中に2メートルほど埋もれている
- 推定重量約6トン
- 頂上に複雑な装飾物
- 柱の表面には梵語の銘文
- 不純物の多い鉄
見事なつくりは冶金技術を物語っている。
しかし驚愕すべきはその「錆びない」という特性である。
いや、厳密には錆びないわけではない。
サンプルを削り取って湿気にさらせば錆びるし、事実地下部分は腐食している。
科学者の調査結果では「偶然錆びないだけ」というなんとも頼りない結論に達した。
いつかこの謎が科学により解明される日はくるのだろうか。
古代人に試されているような気がするのは、私だけだろうか。
●科学的解明
と書いておいたところ、どうやらしくみが判明したらしい。
インドで産出される鉄鉱石にはリンが比較的多く含まれており、鉄を精製する際にカッシア・アウリキュラータというリンを含む植物を加えていた記録があるという。
リンを豊富に含んだ鉄を上手く成型すると、鉄柱の表面がリン酸化合物でコーティングされ、錆に強い鉄柱が完成する。
この説の詳細は、日本テレビ『特命リサーチ200X』で紹介された。
リンには鋼材の強度を低下させる性質もあり、多量に含むと脆くなり成型が困難になる。
5世紀頃のインドに、リン酸鉄が錆に強いという知識があり、リンと鉄の成分バランスを調整する技術があったのだとすれば、それはそれで知識としてのオーパーツと言えるかもしれない。
しかしそのような技術が仮にあったとしても、何故か継承はされなかったようだ。
●それでもまだ残される謎
英科学専門誌ネイチャーに、ダマスカス鋼でできたこの柱の製造にはカーボンナノチューブテクノロジが使われていたらしい、という論文が掲載された。
それによると、電子顕微鏡で観察するとナノチューブ特有の格子構造が確認できたという。
最近の研究状況を踏まえても、私の見解は前回同様、「古代人に試されている気がする」のだ。
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