不思議大好き

★旅館のエレベーター
体験者：モファ夫さん

確か僕が６～７歳ころの話です。
家族で旅行に行き、ある旅館に泊まった時のことでした。
旅館といっても、結構大きくて、あまり「和」という感じのしないところでした。
その旅館にはロビーから僕たちの部屋がある廊下に直接繋がるエレベーターがありました。
僕たちは３泊４日の間、そのエレベーターをずっと使っていました。
そして、いよいよ帰るときです。
僕と弟は用意を済ませており、まだ荷物などの用意の出来ていなかった両親に、
「先にロビーで待っていなさい。」
と言われ、ロビーに行くために、エレベーターに乗り、「ロビー」のボタンを押しました。

するとなぜか、「チン」という音がして開いたエレベーターのドアの先には・・・本来ならば、広いロビーがあり、女将さんなんかがたくさんいるはずなのですが、なぜか薄暗い畳の和室でした。
一番奥には巨大な松の木があり、その手前に背骨の曲がった老婆が僕らに背を向けて座っていました。
そして僕は、その老婆が、キリキリと、ゆっくり、こちらを向いてくるように見えました。
「閉めろ!」
弟にそう怒鳴り、慌ててドアを閉めて、僕らの部屋がある廊下に戻りました。

すると両親が、どうしてんだ？というような顔で僕らを見ていて、今起きたことを説明して、今度は両親と一緒にその同じエレベーターに乗ってロビーに向かいました。「チン」という音とともに、広いロビーが見えました。
あれはいったい、何だったのでしょうか。
僕たちはいったい、どこに行っていたのでしょうか。
あのままエレベーターを降りていたら、僕たちはどうなっていたんでしょうか。

今考えるととても怖いです。あの老婆・・・・ 

たきおんコメント
時として、異界へ通づる扉が開いてしまうのか。
帰ってきたものは夢幻として片付けられ。
帰ってこなかったものは・・・・どうなったのだろうか・・・・。