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追いかけてきたのは

2018/08/15

体験者:くーちゃん

これは、2012年頃の出来事だったと記憶している。
当時、賃貸マンションに家族4人で暮らしていた頃のお話。

「いま、なんか変なものに追いかけられた!」

中学生の次女をピアノ教室に送り届けた高校生の長女が、慌てて玄関から飛び込んできて、鉄扉を閉めてチェーンをかけた後にそう言った。
日が落ちてまもない時間帯でも、教室までの道のりは住宅街の裏通りで、薄暗く、人通りも殆どない。
自宅から教室までは自転車で1分程度の距離とはいえ、妻が自分の手が離せないときに、念のため長女を付き添わせることがあった。

なんだ、変態にでも追いかけられたのかと、私はいつもどおり冗談を言った。
しかし長女の顔は青ざめており、冗談を受け止められる状態ではなさそうだった。
まずは娘を落ち着かせ、話を聞いた。
こんなことがあったという。

次女を無事送り届けた帰り道、ゆったりと自転車を漕いでいた。
曲がり角を左に曲がり、その先の道路左に駐車している車を避け、それを越えたあたりで、音が聞こえてきた。

カッカッカッカッ

角材を両手で逆手に持ち、アスファルトに対して刺すように、交互に叩きつけているような音。
なんだろうと思い振り返った。
先ほど避けた駐車している車、更にその向こうに、曲がり角を曲がってくるものが目に入った。
それは、

棒人間

としか表現のしようがないものだった。
下半身は駐車している車で遮られてよく見えないが、モップの柄5本で作ったような棒人間。
体の中心が棒で、腕も足も棒で出来ており、それが腕と足を振ってこちらに走ってくる。
何がなんだか分からない恐怖を感じて、振り返らずに一目散に家まで自転車を漕いできた、というのだ。

私も、顔面蒼白な娘が語ったのでなければ、信じていなかっただろう。
だがきっと、この世には居るのだ。
理解不能な存在が。

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