学園戦士ケン 1章4節
2016/05/18
4、 『機械』の完成 困っている。 サクライは朝から校舎の研究室である物の設計をしていたが、夕方からさっ ぱり進まなくなってしまった。 「もう9時か・・・」 そう言って時計から目を離すと、白衣の左ポケットから煙草を1本取り出し た。 「一休みするか」 そして大きな溜息をつくと、Gパンの右ポケットからジッポを取り出し、く わえ煙草に火をつけた。 シュッボッ。 暫くして、煙草の灰が床に落ちるのと同時に、部屋の片隅に2メートル程の 楕円形をした『物』が突然現れた。 サクライは慌てて席を立ち、それに駆け寄った。 「出来たのか?成功したのか?」 声を震わせながらそれに問いかけた。 「ああ、出来た。大成功だ!分かっていても、実際に出来てみると嬉しいも んだな」 中から誰かの返事が返ってきた。 それは、紛れもなくサクライ本人の声であった。 「そうか、完成したか。いや、おめでとう」 今にも泣き出さんばかりに感激をしているサクライ。 「ありがとう」 声の主は嬉しそうに答えた。 「それで、いつ出来るんだ?」 「もうすぐ図面は完成する。実物が出来るのはもう少し先だけどね」 「そうか」 少し遠い目をするサクライ。 「そうさ、だから頑張れよ」 「じゃ、俺はこれで行くからな」 「もう行くのか?」 「ああ、これ以上話してるとうっかり『機械』の事を喋ってしまいそうだ」 「そうだな」 「それじゃ」 「ああ」 サクライが答えると中からスイッチ類を操作する音が聞こえ、『物』は静か に消えていった。 --- そうか、もうすぐか。 --- --- ・・・・頑張ってみるか。 --- サクライは希望を感じ、そして思った。 --- 『機械』=時空航行装置が完成したら。 --- --- 苦しんでいた頃の俺の所に行って励ましてやろう。 --- と。 落ちていたタバコを拾いゴミ箱に捨てると、コンピューターに向かってキー を叩き始めた。
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