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学園戦士ケン 1章1節

2016/05/16

 
                              学園戦士ケン

               第1章 奴等

                              1 .   2080年の東京

  西暦2080年、7月8日。
 東京の空は今日も蒼く澄んでいた。
 ここはとある学校・・・だった所だ。
 昔はこの学園にも名前というものがあったのであろうが、今では必要無い。
 その校舎の一室に、サクライは居た。
 サクライは実験室で昼食を終え、窓際の椅子に腰掛け、廃虚と風の奏でるハー
モニーを聴いていた。
 崩れ果てたビルの瓦礫の間から鬱蒼と茂った草木。
 もはや原型を留めないアスファルトの間から伸びる雑草。
 そこに風が吹き込み、奇妙な楽曲を奏でているのだ。
 彼はGパン、Tシャツ、スニーカーを身に付け、袖まくりをした白衣を羽織っ
ていた。
 ふと、外を眺めていた目を細め、ごつい手で髭を摩る。
 そして父親の最後の言葉が彼の脳裏をよぎる。
 ---  奴等を叩き潰すには『ケン』の力が必要だ・・・。 ---
 ---  だが、彼は・・・・・・。 ---
 奴等。
 奴等とは、人間の常識を超えた生物であり、正体不明の獣人である。
 いつ頃から存在したのか正確なところは分からない。
 奴等には多少の知能があり、恐るべき筋力と生命力で人々を脅かす。
 好むのは殺人と誘拐、それだけである。
 何故か。
 それは誰にもわからない。
 誘拐された人々がどうなったのかも見当がつかない。
 ---  !!  ---
 サクライは思った。
 ---  あの『破滅の日』以降に、奴等は現れ始めたんだ。 ---
 その日、『力』によって学園を守ったのが『ケン』とされている。
 しかし、その日から彼を見たものはいない。
 其の後から徐々に奴等の攻撃が始まり、一時それは人々の脅威となったが、
電気科と機械科の協力で奴等に打ち勝つ武器を造った。
 今では武器も進歩し、治安を守る保安隊も結成され、人々はほっと一安心と
いうところだった。
 そして彼は、主に武器等の設計を担当していたのだった。
 サクライは外を眺めながらタバコを1本出し、おもむろにジッポで火をつけ
た。
 この時代で煙草を吸う人間は珍しい。
 煙草自体、作っている人が殆どいない。
 故に、煙草は手製の和紙にくるまれたハンドメイドのものであった。
 それを吸い終えると席を立ち、コンピューターに向かい何やら描き始めた。

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