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学園戦士ケン 1章3節

2016/05/18


                              3、  奴等

  ヒロアキはホールを後にして、苦戦している部下の所へ走った。
「助太刀するぞ!!」
「すいませんヒロアキさん。でも、僕より娘を連れて逃げた奴等を追ってく
ださい!」
「なに!?どっちだ!!」
「東です!」
---  戦いの最中に会話をするなんて、こいつたいした奴だな。  ---
と思いつつ、ヒロアキは東の部下に連絡した。
「こちらHR-1、奴等がそっちへ向かった。気をつけろ!」
「HR-3、了解!」
ヒロアキが急いで東へ走っていると、後ろから2体が追ってきた。
1体は超振動ナイフを持っている。
---  2体か、まずいな  ---
奴等は確実に間合いを詰めてきていた。
下手をすれば東に逃げた奴等と鉢合わせになる。
ヒロアキは次の瞬間、右へ跳んだ。
同時に奴らも跳んだ。
1体はヒロアキの前に、もう1体は後ろに回った。
ヒロアキは着地するとすぐ後ろに再ジャンプし、空中で体を捻り後ろに回っ
た奴の胸に見事に回し蹴りを決めていた。
顎をのけぞらせて草の中に倒れる奴に向かって、素早く抜いていたプラズマ
・ガンを向けトリガーを引く。
奴が草の中に倒れると、とどめに超振動ナイフで頚を切断した。
その隙にもう1体が後ろを取った。
ナイフを持っている方である。
---  しまった!  ---
ほんの小さな油断であった。
あっと思ったその瞬間には『鎧』の背中に深々とナイフをつき立てられてい
た。
ヒロアキは暫く片膝を立てたままだったが、やがて前のめりに倒れた。
奴は用心深く様子を伺っていたが、やがてヒロアキに向かって歩み始めた。
そして、奴がヒロアキの『鎧』に手を掛けようとしたその時!
風の如く立ち上がったヒロアキは、左手に持った超振動ナイフを奴の脳天に
突き立てた。
つもりだったが、ナイフは頭をかばった奴の右腕に深い傷を負わせたに過ぎ
なかった。
しかし次の瞬間、奴は体を「く」の字に折って草の中に倒れた。
そして、かつて奴の腹があった空間にはヒロアキの右手があり、プラズマ・
ガンが握られていた。
奴の腹からは青白い煙が上がり、嫌な匂いが立ち込めた。
ヒロアキは今度こそ本当に、やつの脳天に深ぶかとナイフを突き刺した。
「危ない危ない。奴の超振動ナイフのバッテリーが上がってなかったら死ん
でたよ」
確かにヒロアキの言う通りだった。
その御陰で、『鎧』を深く傷つけられただけで済んだのだ。
「こうしちゃいられない!急がなきゃ!」
ヒロアキは奴等の逃げた東に走った。

  疲れて転んだその場所に、スカートの切れ端があった。
はっ、として立ち上がり、更に走るヒロアキ。
暫くいくと、奴等と闘う部下の姿が目にはいった。
そして木の根元に座って泣いている少女が目に入った。
「ちくしょう!奴等め!」
ヒロアキは奴等に向かって突進していった。
---  奴らは3体、部下2人か。  ---
ヒロアキは1人で2体を相手にしている部下の方へ走った。
「助太刀するぜ!」
と、ヒロアキは1体にむけてプラズマガンで撃った。
そのうち一発が奴の左腕を貫いた。
手負いになった奴は逆上してヒロアキに向かっていった。
そこでヒロアキはプラズマガンを、
撃つ!撃つ、撃つ。
奴が左右に、
よける!よける、よける。
気がついた時には奴が目前まで迫っていた。
---  接近戦ではプラズマガンは不利だ。  ---
ヒロアキはプラズマガンを奴に向かって投げた。
奴が上に跳んでそれをよける。
その隙に腰のホルダーから超振動ナイフを取り出し、奴を追ってジャンプを
する。
見上げると、奴が落ちて来るところだった。
奴の脳天に向けて超振動ナイフを突き出す。
奴が頭を動かしてよけたそれが肩口に刺さる。
そのまま奴とヒロアキは絡み合いながら草むらに落ちた。
落ちてから彼らは横に2、3転し、奴がヒロアキに馬乗りになり首を締める。
ヒロアキは苦しみながらも、奴の肩口からナイフを抜き取り反撃しようとす
るが、だんだん気が遠くなっていくのを感じていた。
不意に銃声がして、奴の手がヒロアキの首から離れた。
そして、ヒロアキがそこに見たものは、頭の無くなった奴の死体であった。
「危ないわねもう!見ちゃいられないわよ」
「ホー・・ル・・・・ちゃん・・・」
奴の死体をどけながら立ち上がり、首をさするヒロアキ。
辺りを見回すと、もう戦いは終わっていた。
向こうでは、少女が隊員の一人にすがって泣いている。
部下は二人ともかなり傷ついていた。
よく見ると、ホールの隣にも一人、部下がいた。
ここに来る前に会った隊員である。
ヒロアキはそいつに歩み寄って言った。
「おまえ、C級隊員だったな」
「ええ」
---  その割には怪我も少ないし、余裕もある。  ---
「名前は?」
「タキオンといいます」
その青年は、A級隊員に微塵も臆することなくはっきりと答えた。
「ふーーん・・・・・おめでとう!」
突然、ヒロアキが言った。
「は?」
いきなりおめでとうと言われ、面食らったタキオンが裏声になって聞き返し
た。
「今日からお前はB級隊員だ」
「え!?」
「腕もいいし、度胸もある。おれが隊長にかけあってやる」
「有難うございます」
深々と頭を下げる。
「恩人そっちのけで楽しそうね」
それまで黙っていたホールが、ちょっとすねた顔で言った。
ヒロアキが気付いて、ホールに近付いた。
「有り難う、恩にきるよ!」
言った途端、ホールの頬にキスをした。
ちゅっ。
ホールは始め戸惑った表情をしていたが、一瞬で真っ赤になった。
パシン!
ヒロアキの頬に手形がついていた。
「おーーーーいて」
「あはははははははははは」
いつしかそこにいた皆が笑っていた。

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